2023.1.20   東京都 太陽光発電設備の設置を義務化 なぜ急ぐ?

目次

  はじめに  

  太陽光発電設備設置を急ぐ理由

 太陽光発電設備設置が普及しない理由

 導入の目的を考える

 まとめ

 参考

 はじめに

2022年12月15日に、東京都で改正環境確保条例が成立し、戸建て住宅を含む新築建築物太陽光発電設備の設置が義務付けられました。

戸建てを含んだ設置義務は全国で初めてです。

東京都が太陽光発電の設置を急ぐ理由は何でしょうか?

 太陽光発電設備設置を急ぐ理由

太陽光発電設置を急ぐ理由の1つは、政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」達成するためです。

ゼロカーボンを目指す動きは、ZEB(Net Zero Energy Building)、ZEH(net Zero Energy Houseがあります。ともに、エネルギー収支をゼロ以下の建物となります。

カーボンニュートラルは、ESG投資※1が注目されているため、企業価値を高めるメリットがあるためです。

 ※1 ESG投資とは、環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行なう投資のこと

ZEBやZEHは、断熱性の向上や換気の効率向上、省エネ機器の導入などでCO2排出量を減らすのですが、どうしてもゼロにはできないので、エネルギー収支をゼロにするには、発電する必要があるのです。ここに、太陽光発電を導入する意味があるのです。

ZEBは、企業や投資家、ZEHは、戸建て住宅メーカーがいち早く取り組んでおり、普及が進んでいます。

なぜ、新築戸建てが注目されているのでしょうか?

「2020年度(令和2年度)の温室効果ガス排出量(確報値)」から「表 4 CO2 の排出量(電気・熱配分後)」によると家庭部門のシェアは、運輸部門、業務その他部門と同等16%となっています。

CO2 の排出量(電気・熱配分後) 環境省

CO2 の排出量は、産業部門以外は横並びなので、家庭部門にも注力する必要があるのです。

ZEBの普及率は、どれくらいなのでしょうか?

「更なるZEHの普及促進に向けたZEH委員会の今後について」によると、

建売戸建住宅のZEHの供給実績  ZEHロードマップフォローアップ委員会

2020 年度における建売戸建住宅のZEH比率は 2.5%にとどまっています。

戸建て全体で見ると、約17%まで落ちてしまいます。

建売戸建住宅のZEHの供給実績が低いことが、東京都が、「30年までに新築戸建て住宅の6割に太陽光発電設備を設置」を急ぐ理由です。

太陽光発電設備設置が普及しない理由

太陽光発電は、ゼロカーボンには欠かせない技術ですが、普及しない理由は何でしょうか?

なんといっても導入コストが高く、使用していくためにはメンテナンス費もかかるため、費用回収期間が長期化するためです。

  • 導入コストが高い メンテナンス費も必要

ソーラーパネル自体の購入や設置、運用に必要な工事に120万~200万円がかかります。

設置費用を賄うには、ソーラーローンという太陽光発電システム専用の低金利ローンを利用することが可能です。

メンテナンスは(定期点検)は、2017年の改正FIT法で新しく追加されています。また、

ソーラーパネルが汚れていると発電効率が落ちるので、年に2~3回の清掃が必要です。

清掃費は、一般的に基本料金+パネル1枚ごとの価格に設定されています。

基本料金1万円前後、パネル1枚あたり500円~1,000円が相場だそうです。

一般家庭での太陽光パネルの設置容量5kWの場合、最大出力200Wのパネルが20枚とすると1回あたり2~3万円程度の費用がかかります。

一般的に電気関係の設備は、15~20年に取り換える必要もあります。

  • 売電価格の下落

FIT・FIP制度の太陽光発電の買取価格は、2022年度以降の価格表(調達価格1kWhあたり)

1kWh あたり調達価格等 経済産業省

価格は、どの区分でも単価下落傾向にあります。

 戸建て住宅の屋根における太陽光発電の「システム容量」は、3〜5kW程度ですので、2023年度の太陽光発電の売電価格は、16円/kWhです。

 売電するためには、自家消費以上に発電する必要があります。

自然相手の発電であるため、場所や季節によって日照量が変化するため発電量を一定にするのは難しいです。

 売電するうえで気を付けることが、もう1つあります。

電圧上昇抑制」という機能で、送電線内の電圧を一定範囲内にする目的で制御されています。このため、一時的に電気が売れない場合もあります。

導入の目的を考える

太陽光発電を導入する目的をしっかり確認したほうがいいかもしれません。

消費者物価は、22年12月4.0%上昇、都市ガス代は33.3%、電気代は21.3%上がったと日経新聞は伝えています。

2023年度から託送料金が値上げされるので、さらに電気代がアップしていきます。

売電単価が下がっているために電気を売って稼ぐという目的よりも、自家消費のメリットを考えた方がいいかもれません。

  まとめ

戸建て住宅を含む新築建築物に太陽光発電設備の設置が義務化

家庭部門のCo2排出量のシェアは、運輸部門、業務その他部門と同等の16%

建売戸建住宅のZEH比率は 2.5% 戸建て全体で見ると、約17% 

太陽光発電設備設置が普及しない理由は、設置費用が高額、メンテナンス費もかかる、売電価格の下落

参考

 地域脱炭素ロードマップ 環境省

https://www.env.go.jp/earth/%E2%91%A0%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E8%84%B1%E7%82%AD%E7%B4%A0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%97.pdf

2020年度(令和2年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について 環境省

https://www.env.go.jp/press/110893.html#:~:text=%E7%92%B0%E5%A2%83%E7%9C%81%E3%81%A8%E5%9B%BD%E7%AB%8B%E7%92%B0%E5%A2%83,4%2C450%E4%B8%87%E3%83%88%E3%83%B3%E3%81%A7%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82

更なるZEHの普及促進に向けたZEH委員会の今後について ZEHロードマップフォローアップ委員会

https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/data/220330-1.pdf

FIT・FIP制度 経済産業省

https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_kakaku.html

電圧上昇抑制とは  関西電力

http://www.kepco.co.jp/home/ryoukin/kaitori/images/syuturyokuyokusei.pdf