2021.3.31 不動産分野における「気候関連財務情報開示タスクフォースの提言」

昨今の投資家の動きを受けて、国交省は令和3年3月30日に「気候関連財務情報開示タスクフォースの提言」対応のためのガイダンスを策定」を発表しました。

投資家が投資先に対して気候変動への配慮を求める動きが拡大し、気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に対応した情報開示を求めるようになってきていることに対応した参考資料をとなっています。

TCFD は、世界の主要国の財務省や中央銀行が、気候変動がリーマンショックと同レベルの金融システムの不安定化のリスクを持つと考えたことに端を発しています。

TCFD提言とは、2015年12月に金融安定理事会が設置した気候変動関連財務情報開示タスクフォース( Task Force on Climaterelated Financial Disclosures)が提言した自主的な情報開示のあり方に関する提言(TCFD報告書)のことです。

タスクフォースは、金融安定理事会によって選ばれた、世界各国の大手銀行、保険会社、資産管理会社、年金基金、大手非金融企業、会計・コンサルティング事務所、信用格付機関などのメンバーにより構成されています。

2017年に公開された提言書は、4つの金融セクター(銀行、保険会社、アセットオーナー、アセットマネージャー)と4つの非金融セクター(エネルギー、運輸、原料・建築物、農業・食糧・林業製品)と幅広く提言されていますが、国交省の今回の提言は不動産分野界にフォーカスされています。

開示する項目は、4 つの推奨事項(「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」)にわかれています。

ガバナンス:気候関連のリスクと機会に係る当該組織のガバナンスを開示

戦略   :気候関連のリスクと機会がもたらす当該組織の事業、戦略、財務計画への現在および潜在的な影響を開示

リスク管理:気候関連リスクについて、当該組織がどのように識別、評価、および管理しているかについて開示

指標と目標:気候関連のリスクと機会を評価および管理する際に用いる指標と目標について開示

となっており、各々で推奨される開示内容が具体的に記載されています。

TCFD の枠組みの要諦となっている、戦略のシナリオ分析のコンセプトは、「シナリオ分析とは、企業の事業環境における不確実な将来に対して、シナリオを一つに絞るのではなく、様々なシナリオを想定することによって、不確実性を前提とした経営上の意思決定を行うための手法である。本来的には、気候変動分野だけでなく、アジェンダを問わず活用可能な手法である。」とされています。

不動産分野における提言は、資本集約的であるので、情報開示においては、以下の事項に関する定性的および定量的評価潜在的な影響の可能性に重点を置く必要がある。

・ 排出制限の強化や炭素排出価格付けおよび関連するコストへの影響

・ 急激な気象事象の頻度増加、急激な気象事象の深刻度の増大およびこれらが不動産セ

クターの操業環境に与える影響(水不足の増加等)

・ 効率の改善、エネルギー利用量の削減または循環型経済の拡大に資する製品(または

サービス)に関する機会

とされており詳細は、図表に記載されています。

各国の規制

フランスでは、気候関連の情報開示が法律24によって既に義務化されているが、今後は同

法を TCFD 提言に連動させることが検討されている。英国では、TCFD に基づく情報開示

を 2022 年までに上場企業および大規模のアセットオーナーに対し義務化することを視野入れて検討を重ねています。

その他各業界の動向は、

・企業の動向

TCFD に賛同する企業数は、341 の機関が賛同を表明している。(2021年2月25日時点)

RE100 および SBT といった国際イニシアティブへの参加。RE100 の加盟企業数は世界で 29512、日本企業は 51社となっている。

RE100 は、企業が自らの事業で使用する電力の 100%を再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアティブです。

SBT は、パリ協定に整合する科学的根拠に基づく温室効果ガス削減目標(Science Based Targets)を設定する企業を認定するイニシアティブである。

・投資家の動向

ESG (境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance))の視点から投資先企業を選別すると同時に、投資先に ESG への配慮を求める動きを強めている。

る動きを強めている。

・国内の金融機関の動き

グリーンボンドに加えて、環境配慮活動に取り組む企業に対して金利を優遇する環境配

慮型融資や、再生可能エネルギーの導入・低公害車の購入等の企業における環境対策に特化した融資商品の開発等、企業の環境対応を支援する取り組みがある。

※グリーンボンドとは、気候変動対策や再生可能エネルギー等、環境分野への取り組みに特化した資金を、調達するために発行する債券のこと。

・NGO の動き

環境 NGOが大手企業に対して気候変動に関する株主提案を提出し、パリ協定に沿った企業

活動を行うよう要請する事例が現れている。

加えて、投資家や企業の気候変動に関する取組を NGO が評価する動きも活発化している。

中でも、国際 NGO は、企業の脱炭素化への取組を推進する目的で企業の気候変動や水・森林資源等に関する情報を経営リスクの観点から収集・分析し、その結果を評価して投資家向けに公開している。

参考

 不動産分野における「気候関連財務情報開示タスクフォースの提言」対応のためのガイダンスを策定   国交省

https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo05_hh_000001_00024.html

不動産分野におけるESG-TCFD実務者WG 国交省

https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000215.html