〇2023.4.19   2023年4月施行の改正民法 不動産に関係する項目を3つピックアップ

 目次

  はじめに

いつから施行?適用されるの?

不動産に関係する変更

近隣関係

 共有精度の見直し

相続制度の見直し

  まとめ

参考

 はじめに

2023年4月に施行される民法改正は、

  • 所有者不明土地の発生予防と
  • 利用の円滑化

の両面から民法の改正が行われました。

関連する法律は、

民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号)

です。

所有者不明土地は、内閣官房の「所有者不明土地問題研究会 最終報告概要」によると。

2040年の所有者不明土地面積は、約720万haでおおよそ北海道本島の土地面積:約780万haに近い値となるようです。

原因は、相続登記の未了住所変更登記の未了です。

売買対象の土地の一部に、借地権が設定されており借家に人が住んでいるのですが、住んでいる人の両親が契約した後亡くなられたので、借家人は、借家の保有者にあったこともない事例がありました。これでは借地部分を買い取るわけにはいきません。

いつから施行?適用されるの?

いつから、改正民法は適用されるのでしょうか?

「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)は、公布日が2021年4月28日で、施行日は、2023年4月1日(民法部分)なのですでに施行されています。

「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号)

こちらは、交付日が、2021年4月28日、施行日は、2023年(令和5年)4月27日となっています。

不動産に関係する変更

近隣関係の見直し

  • 境界付近に関すること

   現状 :境界付近における障壁・建物を築造・改修する場合、隣地の使用が認められている。

   改正後:境界標の調査、境界に関する測量、隣地の木の枝の切り取りのために隣地の使用ができるようになった。枝の切り取りは条件付き

  • ライフラインの供給設備の設置

   現状  :人の土地に生活に必要なライフラインの設置に関して根拠規定がない

   改正後 :隣地の土地を使わなければ、生活に必要な電気・ガス・水道などが引けない場合は、必要な範囲内でほかの土地に設備を設置、または他人の設備の使用が可能

隣地所有者不明でも対応できるようになった

 共有制度の見直し

  • ほかの共有者に対する義務

現状  :義務に関する定めはない

  改正後 :ほかの共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価の償還義務を負う  

善管注意義務 

  • 一部共有者が使用している場合の使用方法の変更

現状  :管理に関する事項は、持分の価格に従いその過半数で決める

改正後 :共有物を使用する一部共有者がいても、持分の価格の過半数によって利用方法を変更することができる

  • 共有物の変更について

現状  :共有物に変更を加える場合は、共有者全員の同意が必要

改正後 :軽微な変更については、共有者の持ち分の価額に従い、その過半数で決められる

  • 管理者の制度の設置

共有者が第三者を管理者と定めれば、管理者は、日常的な管理ができることが定められた。

  • 所在等不明な共有者がいる場合の措置

現状  :共有者の中に所在不明者がいる場合は、共有物の処分や変更が不可

改正後 :所在者不明の持ち分について、

     他の共有者が取得する措置

     他の共有者が第三者に譲渡する権限を付与

     所在不明者以外の共有者の同意で、変更、管理に関することが決められる

相続制度の見直し

  • 共有持ち分の分割について

相続発生した後、遺産分割協議書が定まるまで資産は共有になります。

共有物の分割はもちろんできません。

現状  :遺産分割協議の期日に制約はない

改正後 :相続開始の時から10年を過したときは、分割できていない財産について、共有物分割請求ができるようになる

分割の基準は、法定相続分又は指定相続分

  • 相続土地国庫帰属法

相続で不動産を引き継いだ場合は、管理する必要があります。しかし、土地が遠隔地にある場合は、売れる土地だといいですが売れない土地を引きついだ場合は困ります。そこで手放したい人が増えています。

そこで、相続・遺贈により取得した土地は、法務大臣に申請して、国庫に帰属することができるようになりました。

ただし、ハードルはかなり高いです。10年先までの管理費として費用を納めんなければならないし、更地でないとだめ、農地はだめといろいろな制約があります。

  まとめ

2023年の民法改正では

  • 所有者不明土地の発生予防と
  • 利用の円滑化

が見直されました。

 不動産に関連する事項としては、

 ・境界付近に関する隣地の使用範囲が広まったこと。

 ・共有者に義務が定められたこと、

 所在等不明者がいた場合の、共有持ち分の変更、管理に関することが定められたこと

によって使い勝手がよくなります。

 かなりハードルは高いですが、相続土地国庫帰属法が制定されました

参考

民法等の一部を改正する法律 法務省

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00179.html

相続土地国庫帰属制度の概要

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html

所有者不明土地の 実態把握の状況について 国交省

https://www.mlit.go.jp/common/001201304.pdf

所有者不明土地問題研究会 最終報告概要 内閣官房

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shoyushafumei/dai1/siryou1-2.pdf

住宅業界に関連する 民法改正の主要ポイント

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutaku-kentiku.files/kashitanpocorner/dl_files/kaisei_minpou.pdf